ビジネス映画に学ぶ経営論 『きっと、うまくいく』が教える型破りな成功法則とは?

私は映画が大好きで、さまざまな作品から経営のヒントを得ています。今回は、インド映 画の『きっと、うまくいく』を通して、ビジネスの世界にも通じる成功法則を皆さんと共有した いと思います。

映画『きっと、うまくいく』の内容

この映画はインド屈指の工科大学ICEを舞台に、3人の学生、ランチョー、ファルハーン、 ラージューの友情と成長を描いた青春ドラマです。 ランチョーは型破りな自由人で、「All is well」(きっと、うまくいく)がモットー。厳格な教 育方針の学長と対立しながらも、周囲の人々に影響を与えていきます。 ファルハーンは動物写真家になりたいのに、生まれた瞬間に父親にエンジニアになること を強制されていました。職業選択を制限するカースト制度には存在しない「ITエンジニア」 が、カースト制度と貧困から抜け出すカギだからです。 ラージューは特に貧しい家庭出身で、常にプレッシャーを感じている苦学生です。 3人は学長の押し付ける競争主義や点数に固執する教育方針に疑問を抱きながらも、友 情を深め、それぞれの夢に向かって進んでいきます。

なぜインドで大ヒットしたのか

『きっと、うまくいく』は、2009年に公開され、インド映画歴代興行収入1位を記録した大ヒッ ト作です。インドアカデミー賞では作品賞をはじめ史上最多の16部門を受賞しました。 一見、普通の青春コメディー映画のようですが、実はインドの教育問題や競争・格差社会 問題を鋭く風刺し、 “本当の成功とは何か” を問いかける深いメッセージが込められています。 今回はこの映画から得られる「型破りな成功法則」を、中小企業診断士の視点から解説し ていきます。

型破りな成功法則

1. 情熱を追求する
主人公ランチョーは、周囲の期待や社会通念にとらわれず、常に “好きなことを追求する こと” が成功への道だと信じて行動します。彼の言葉に「成功を追いかけるな。優秀さを追 求しろ。そうすれば、成功は自然とついてくる」というものがあります。これは、自分の本当 に好きなこと、情熱を注げることに全力を尽くすことの大切さを示唆しています。 〈中小企業診断士の視点〉 企業経営においても、この考え方は非常に重要です。 • コアコンピタンスの明確化:企業は、自社の強み(コアコンピタンス)を明確化し、 その強みを生かせる事業領域に集中することで、競争優位性を築くことができます。 • ブルーオーシャン戦略:競争の激しい既存市場(レッドオーシャン)ではなく、競争 のない未開拓市場(ブルーオーシャン)を創造することで独自の価値を提供し、大 きな成功を収めることができます。 ランチョーのように既存の枠にとらわれず情熱を追求することで新たな価値を創造 し、成功へとつながる道が開けていくのです。

2. 恐怖心を克服する
ラージューは、貧しい家庭環境や将来への不安から、常に恐怖心に苛まれてい ます。就職活動の面接ではプレッシャーからうまく自己表現できず、失敗を繰り返し ていました。しかし、ランチョーの励ましや自身の経験を通して徐々に変化して 恐怖心を克服していきます。そして、最終的には自分の弱さを受け 入れて面接に臨むことで、内定を勝ち取ります。 〈中小企業診断士の視点〉 企業経営においても、リスクや不確実性といった恐怖心はつきもの です。 • リスクマネジメント:経営には、さまざまなリスクが潜んでいます。 リスクを特定し、分析し、適切な対策を講じることで、リスクを 最小限に抑え、事業を安定的に推進することができます。 • イノベーションの促進:変化の激しい現代において、現状維持は 衰退を意味します。新しいアイデアや技術を積極的に導入し、イ ノベーションを促進することで、変化に対応し、競争優位性を維 持することができます。 ラージューのように、恐怖心に立ち向かい積極的に行動することで 新たな可能性を拓き、成長を遂げることができるのです。

3.つながりを育む
ランチョー、ファルハーン、ラージューの3人は、個性豊かでバッ クグラウンドも異なりますが、互いに支え合い、励まし合いながら、 強い絆で結ばれています。彼らは友情を通して困難を乗り越え、そ れぞれの夢に向かって進んでいきます。 〈中小企業診断士の視点〉 企業経営においても、人材は最も重要な資産の1つです。 • 人材育成:社員一人一人の能力を最大限に引き出し、成長を 促進することが組織全体の活性化につながります。社員のモチ ベーションを高め、能力開発を支援することは企業の成長を加 速させます。 • コミュニケーションの重視:部署間や社員間のコミュニケーション を円滑にすることで、情報共有や相互理解を深め、組織全体の 結束力を高めることができます。 ランチョーたちのように、互いに尊重し合い、協力し合うことで、よ り大きな成果を上げることができるのです。

4. 固定観念を捨てる
学長は厳格な教育方針を貫き、学生たちを点数で評価すること に固執しています。 しかし、ランチョーとの関わりを通して彼の型破りな発想や行動 に影響を受け、徐々に自身の固定観念を見直していきます。 〈中小企業診断士の視点〉 • パラダイムシフト:時代の変化に合わせて、従来の考え方や行 動様式を柔軟に変革していくことが重要です。過去の成功体験 に固執せず、常に新しい情報や技術を取り入れ、変化に対応し ていくことで、持続的な成長を遂げることができます。 • 多様性の尊重:多様な価値観や意見を積極的に取り入れること で、新しい発想やイノベーションが生まれやすくなります。社員 一人一人の個性を尊重し、多様な意見を融合させることで、よ り良い組織文化を築くことができます。 学長のように、固定観念を捨て柔軟な思考を持つことで、新たな 視点や可能性が見えてくるのです。

中小企業診断士からの経営ポイント

『きっと、うまくいく』は、上記で述べた成功法則に加えて、経営 者にとって重要な以下のポイントも示唆しています。 • 顧客視点の重要性:ランチョーは、常に学生たちの視点に立ち、 彼らのニーズに応える教育を追求しています。企業も顧客の ニーズを的確に捉え、顧客満足度を高めることで顧客との関係 性を向上させることができます。 • 枠にとらわれない創造性:ランチョーは既存の枠にとらわれず、 自由な発想でさまざまな発明を生み出していきます。企業も、創 造性と自由な発想を重視することで、新たな価値を創造し、競 争力を強化することができます。 • 倫理観と社会貢献:ランチョーは不正や不平等を嫌い、社会貢 献にも積極的に取り組んでいます。企業も倫理観に基づいた誠 実な経営を心がけ、社会に貢献していくことで長期的な信頼を 獲得することができます。

まとめ

映画『きっと、うまくいく』は、単なる娯楽作品ではなく、ビジネス の世界においても重要な教訓を与えてくれる作品です。 情熱を追求すること、恐怖心を克服すること、つながりを育むこ と、そして固定観念を捨てること。これらの型破りな成功法則を実 践することで、私たちは “本当の成功” に近づくことができるのでは ないでしょうか。 ぜひ、この映画を通して、皆さん自身の “成功” について改めて 考えてみてください。

今一 茂実
登録番号

今一 茂実

26歳、2024年診断士登録。IT企業と税理士事務 所での勤務経験を生かし、現在は東大阪商工会議所 で企業支援に従事。映画を通して経営のヒントを探求しています。