中小企業で輝く企業内診断士 私は最強!自らが経営者であることに気づけば、「企業内」であることが唯一無二の強みに変わる。
◆診断士資格の捉え方・生かし方
私が登録して丸15年が経過し3度目の更新を昨年10月に済ませ たところです。現在は、所属企業や関わりのある組織での立場を 生かし、組織横断的に活動しています。さて、自分の診断士とし ての歴史を簡単に振り返ると、やりたいこと・できること・やるべき ことを棚卸ししながら、自分の人生を経営に置き換えて、ビジネス モデルを考え続けてきたような気がします。例えるなら、自分自身 が「株式会社自分」を起業した株主兼経営者として、自分と言う名 の製品サービスを生み出す開発担当者として、それを売る営業担 当者として、改良改善に取り組む品質担当者としての活動です。 言い換えれば、診断士の知見を生かして「人生の経営」をしてきた 一人経営者です。「株式会社」と表現した理由は、私は資格を収入 増につなげることを念頭に置いてきたからです。もちろん、資格の 生かし方は十人十色ですが、 もし本当の経営者にアドバイ スをする立場なら、企業内診 断士であっても、自らが経営 者であることを意識して対等 な関係を築くべきだと考えまし た。「株式会社自分」を設立す るつもりで、経営理念やビジ ネスモデルを文字化し、短 期・中期・長期の視点で経 営計画書や事業計画書を作 成するだけで、実務に近いト レーニングになると考えます。
◆登録後の活動内容を振り返って
更新期間5年を1スパンとして企業成長の4ステージで例えると、 「創業期」は協会内だけでなく民間の研修やセミナーにも参加しな がら、自分が講師側に立って話すことやコミュニティーで幹事や事 務局を手伝う機会を貪欲に求めていました。また、スキルアップ研 修への登壇や研究会で運営側の役割を申し出るのもありだと考え ました。「成長期」は副業として小さな会社の顧問やセミナー主催を 経験し、個人事業主として収入を得るやり方を学びながら、人脈 が加速的に広がった時期です。特に意識したのはプライベートで 経営者と出会う機会で、飲み仲間になった経営者からの仕事の依 頼や紹介が徐々に増えました。「成熟期」は知り合いの紹介で大手 企業の関連会社との2年間のコンサルティング契約や、ベンチャー 企業のIPOに社外役員として携わるなど、ご縁が無ければ得難い 経験をさせていただきました。そして次回更新までの期間は、4段 階目の「再成長期」に当たるので、個としての活動は継続発展しつ つも、所属組織のイノベーションを牽引するチェンジリーダーとして の役割へ軸足をシフトしていきます。
◆所属企業での活動 ・企業概要
活動背景を理解いただくために勤務先企業を簡単に説明してお きます。大手産業機器メーカーの代理店で業種は卸売業、社歴 は昨年90周年を迎えました。従 業員35名ほどの民族系で歴代代 表は遠縁含む親族で継承されて おり、現社長は就任13年の5代 目です。私は大学卒業後にプロ パー社員として勤務し今年で29 年目です。組織のプロフィットセ ンターは2グループある営業部で す。私はその一方の営業部の部 長としてメンバー8名と年間予算 35億の約半分を預かっています。 顧客は大手から中小零細までの モノづくり企業で、素材メーカー もありますがセットメーカーが大半を占めています。法人向けルート セールスで約200社の既存顧客との取引が90%、残り10%を既 存顧客の深耕や新規顧客で予算を達成しています。会社の業績 はここ10年良くも悪くも安定しており、大きな浮き沈みが無い状況 です。社内ポジションとしては、4名の経営幹部の指示伝達事項 に従っている限り、ある程度は自由に行動できる立場です。 ・企業内活動 その1「果敢に新規開拓」 予算を預かった10年前から新規顧客の開拓を率先して行ってき ました。既存顧客の海外法人(中国)との貿易をスタート、数年前 には海外法人(台湾)との直接取引を開始し、年1.5 ~ 2億円の売 上増を達成しました。これらの活動は診断士として直接の活動ではありませんが、中小企業の販路開拓手法として海外進出を機会 と捉える考え方を学んでいなければ、会社の指示でもなく、社内 で頼れる人物もいない貿易に、積極的になれたかは疑問です。 ・企業内活動 その2「新分野への進出」 上記と同時期に、工場建屋の修繕を請負う工事サービスを立ち 上げました。先に述べた「成長期」に、診断士仲間とグループコン サルティングを行った工事会社I 社との協業です。最初の顧客は 自ら主催した勉強会に参加してくれたM社の責任者で、勤務先企 業の立場で元請けし、I 社に発注するスキームでした。この経験 が診断士や経営者との人脈が仕事につながる成功体験となりまし た。現在は「新事業」を創設し、I 社との協業で年1 ~ 1.5億円の 売り上げを達成しています。その結果、施工管理技士の資格を自 らが受験する羽目になったのは想定外でした。 ・企業内活動 その3「知見を生かしてトラブル対応」 新事業を伸ばすため、ここ数年トライ&エラーしています。新た な挑戦が予期せぬトラブルを引き寄せました。工事の請け負いが 発展し、設備投資案件に参入する機会を得ました。Webで探した メーカーを担いでコンペに勝利し、設備一式を初受注しました。勤 務先は半導体や制御機器の販売が主ですので、設備丸ごと取りま とめる経験はありませんでした。その折、何と納期直前に発注先 が倒産したのです。再生の可能性を祈りながら代理人弁護士との 面談に挑みました。顧客からは約5千万円の受注、発注先には1.3 千万円の前払い済み、キャンセルが許されない状況です。結果は、 破産でしたが、破産管財人が決まるまでの猶予期間内に、検収ま で完遂できました。法務面や技術面およびスケジュールなどの課 題を解決しながら、診断士の知識と日頃から他士業である弁護士 と交流していた知見から、冷静な対応ができた事例です。 ・ 企業内活動 その4「診断士ノウハウ『know how』と人脈 ノウフ―『know who』の融合」 現在進行中の活動ですが、勤務先企業で中小企業省力化補助 金の一般型を活用した省人化コンサルティング事業を立ち上げます。 また、同補助金のカタログ型の販売店となることで販路開拓を行 います。ただし、販売店登録は限定して実施する計画で、既存顧 客の製品登録を支援し、登録後に販売店登録をすることで、顧客 の製品を販売する側に転身するスキームです。販路開拓と新規商 材開拓を同時獲得するビジネスモデルであり、顧客とは双方向の 取引となるため、より強固な関係構築がねらいです。偶然が重なり ますが、顧客の責任者が同い年でかつ15年前に診断士試験を目指した経験があるとのことで、補助金活用の話題で意気投合し協 業する方針が決まりました。ノウハウだけでなく、ノウフ―が新事業 を次のステージへ昇華させるきっかけになりそうです。
◆研究会代表としての活動
昨年から研究会代表として新たな取り組みをしています。メン バーのニーズに応える方法として、企業内診断士が実務に触れる 機会の創出です。中小企業施策の中でも補助金活用支援は、中 小企業と企業内診断士が接点を持ちやすいのではと思い至りまし た。私自身は何度か間接的に事業計画書作成に携わってはいた のですが、以前は補助金申請を直接支援することには興味が持て ませんでした。理由は申請を丸投げする経営者や、それに応じて 何件通して幾らのような下請け的に支援することに抵抗があったか らです。そのため、今回は全く異なったスキームを構築しています。 具体的な内容は割愛しますが、クライアント企業×勤務先企業× 独立診断士の契約で、独立診断士を手伝う形で事業計画書の作 成支援を行うイメージです。従って、関係者のコンプライアンス や規則と規定の順守は 確実に担保して実施し ています。興味をお持ち の方は研究会をご見学く ださい。
- 登録番号
山元 教有
大阪府中小企業診断協会2009年入会。2015年か
ら企業内診断士活性化研究会代表。1996年4月、
澤電気機械株式会社に入社(現任)。2013年4月、株式会社アス
タリスク監査役に就任。2018年11月、同社において社外取締
役・監査等委員に就任(現任)